新規営業とルート営業は別物

大手印刷会社の新規営業担当として勤務した後、中堅機械メーカーのルート営業に転職しました。同じ営業職ということで売るものが違っても基本的な働き方は同じだろうと考えていたのですが、転職してみると何から何まで違っていて、同じ営業職でもここまで違うのかとショックを受けました。

大手印刷会社での新規営業の仕事内容は、まず無数にある営業先リストを片っ端から訪問し、プレゼンをして、新規受注するためにクライアントの要望を吸い上げて、クライアントごとにカスタマイズしたサービスを提案して受注獲得数が営業成績になるというスタイルでした。印刷物が商品ということもあり、クライアントごとにオーダーメイドでひとつひとつ違う提案をして、値段もその時ごとにバラバラなので都度試行錯誤していくスタイルでした。やりがいはありましたが、何しろ業務量が多すぎて、残業代が支払われるとはいえ、来る日も来る日も残業という日々に疲れ果ててしまい転職を決意しました。

営業職の経験を売りに転職活動した結果、中堅機械メーカーの内定を貰いました。基本給は前職と同じでしたが、残業時間に応じての残業代はなく、代わりに月5万円の営業手当が付きました。同じ営業職ということで、売るものが違うだけで前職の経験を生かしてそこそこうまくやれるだろうという風に自分では予想していました。何しろ、前職で残業を苦にして退職したので、残業時間が減るなら前職での残業代よりも、現職の営業手当が少なくなったとしても、体感的な満足度は上昇すると考えていました。実際、転職活動の中での面接でも、担当の上司から残業時間はあまり多くない職場だということも聞いて確認していました。

働き始めてみると確かに前職のような目の回るような忙しさと残業時間が無いのはすぐにわかりました。初日は、直属上司から仕事内容の説明を受けながら部署内の様子を確認していたのですが、営業社員がほとんど社内に残っていて、のんびり雑談をしているような雰囲気で、社内の電話が鳴る回数も圧倒的に少ないのがわかりました。私は内心、これなら転職は成功で、思い通り余裕ある仕事スタイルで仕事が終わった後のプライベートも充実できそうだと、安心しきっていました。

実際、新しいメーカーでの仕事では、クライアントは前職と違いエンドユーザーではなく代理店なので、一人当たり数社程度の代理店を担当先にして、毎月ほぼ決まった内容の商品をルーチンで納品し続けるという形なので、新規獲得のための営業活動は皆無と言って良かったのです。しかも納品、工程管理はイレギュラーがなければ派遣事務の女性アシスタントの社員がメインでやってくれて、営業担当はそれをチェックするだけと言っていい形でした。販路が固定していて求められるのは現状維持だけなので、前職での働きぶりを知っている自分は、営業担当社員がいらないくらいではないかと感じたくらいでした。

しかし、実際のメーカーの仕事の辛さは日常業務ではなく、クレームやトラブルが発生した時のイレギュラー対応と、販路を維持するための日常的な接待でした。前職では、無数のクライアントがいたので、一件ごとを接待するようなことは少なく、トラブルに関してはもちろん解決の為に奔走しますがそれが後を引くことはありませんでした。 しかし、このメーカーではトラブル対応で、繰り返し代理店と打ち合わせしたり、エンドユーザーへの報告会を開いたりすることが、代理店と自分たちメーカーにとっても仕事をしてますアピールになるので、解決するでもなくだらだらと低姿勢で堂々巡りを続けなければいけないのです。さらに、その中で定例的な親睦会や、問題解決のための工場視察の打ち上げという名目での接待を繰り返します。メーカーはエンドユーザー、代理店の中で一番下の立場なのでこういう接待は卑屈になり大変です。

そういうわけで、転職には成功し、勤務時間内の業務量、残業時間、給料の待遇については、面接で確認した通りに希望と違わない形で実現できたのですが、接待やイレギュラー対応の勤務時間外の、面接では触れられなかった別の面での大変さを感じることになってしまいました。残業時間は少なくなったけれど、多い日には毎日のように終業後の接待をしなければならず、拘束時間としてはむしろ増えたくらいです。そして、経費の建て替え、場合によっては自腹、終電を逃してタクシー代を自腹などを考えると懐事情は却って悪くなってしまいました。

同じ営業職でも、新規営業かルート営業かの違い、クライアントとの力関係などでこうも仕事内容が違うのかということを十分に把握していればもっと満足度が高かったと後悔しました。