銀行の仕事と営業職の違い

大学を卒業して、ある地方銀行に就職しました。その時は超就職氷河期と言われている時代で、「就職できただけで御の字、それが銀行なら断る理由もない」と言われるような雰囲気。私は特に銀行に就職したいと考えていたわけではなく、とりあえず受けてみたら最初に内定をいただけたのが銀行だったというだけでした。

超氷河期に銀行就職

銀行で何をするか、何をしたいかもわからないまま内定したことを家族に話すと、当然のように銀行に就職するように促されました。断る筋の通った理由もなかったため、そのまま銀行に就職することを決めました。

銀行では地方支店に配属されました。その地方は工業地帯で、有数の工場を顧客として持っている支店でした。顧客が固定されているからか、顧客数に比べるとかなり小規模な視点でした。預金・渉外・融資を合わせても。10人ほど。その中で預金担当として配属された私。預金は新人の私以外には勤続5年ほどの独身女性が一人だけ。それ以外に責任者として銀行の次長がいました。

次長は支店長の次の立場。融資の責任者も兼ねています。そして、その次長は融資で経験を積んできた人でした。預金のことはあまり分かっていない様子で、どんな書類を出しても判子を押してくれるような上司でした。つまり、実質的責任者は勤続5年の先輩女子です。その先輩女子と私、実質二人で預金担当というスタートでした。

いきなりの責任者扱い

新卒で就職して半年、なんと二人しかいない預金担当のうちの一人の先輩女子が退職することになりました。結婚が決まりお腹にはすでに赤ちゃんがいるとのこと。おめでたいことですが私は真っ青です。先輩女子が退職することにより、人事異動が出来る4月まで私一人でなんとかしろとのお達しが。私は半年前まで大学生。何とかできるわけがありません。上司の次長は全く頼りにならず、全責任が私にかかってきます。

いくらなんでもこんなのおかしい、と思いながらも毎給料日は目が回るような忙しさ。それなのに一番新人の女子だからという理由でお茶くみの仕事もあります。「銀行では1円でも足りないと帰れないんでしょ?」とよく聞かれますが、一番怖いのは現金ではありません。

大体何万単位で間違うことなんてまずないのです。間違ったとしても何円の世界。そう、一番怖いのはお金ではなく書類です。扱う書類は有印書類や公の重要書類。間違えたら最後、もちろん修正液なんて使えません。書類を書き直してもらう、判子を押しなおしてもらう、住民票を取り直してもらう…そのたびに上司と顧客に頭を下げ謝り倒します。

このころの私は毎日会社の夢を見ました。毎日毎日、銀行で何かミスをする夢。先輩女子が辞めてから半年、待ちに待った4月の人事異動の際に来たのは新卒の女子でした。私はてっきり経験値のある先輩が来てくれると思っていました。新卒2年目に新卒を付けてどうするんだ…。そこまで何とか保っていた糸が切れました。そして、その新人がなんとか仕事を覚えるだろう1年後をめどに、転職することにしました。

結果がすべての営業職

転職先は営業職です。外回りではなく店舗型の営業でした。その新しい職場でまず驚いたのが「失敗はその場で修正できる」ということ。例えば書類に間違えた数値を書いてしまった場合、今までなら上司とお客様に頭を下げて書類をもらいなおしていましたが、今度の職場では上司に報告したら「修正液で直しておいて」と言われたのです。修正液、というものを銀行では使ったことがなかった私は、修正液で間違いがチャラになるということが嬉しくて仕方ありませんでした。

その他にも、「失敗してもみんなでなんとかすればいい」というチームワークを新しい職場では感じました。「キチンと間違いなくこなすことが大事」な銀行と違って、新しい職場の営業職は「成果につながれは過程はどうでもいい」という意識があったのです。

仕事が違えば過程も違う

銀行は素晴らしい職場でしたし、勉強にもなりました。先輩女子の退職がなければずっと銀行にいたかもしれません。しかし新たな職場の営業職で私が得たものもまた、素晴らしいものでした。結果私にはこちらが天職だったようです。

仕事が違えばやり方も意識も、過程も違うのです。自分にとって何か違うと感じるならば、違う世界へ一歩踏み出してみるのも良いことなのかもしれません。